理事長挨拶

ご挨拶

代表理事

この度、髙久史麿前理事長の後任として、本機構理事長に就任致しました。本機構は発足より5年が経過しましたが、まだまだ出発したばかりであり、本任務は私にとりまして大変な重責と感じております。皆様のご指導ご鞭撻を切にお願い申し上げます。


さて、本機構は、2015年12月に設立された新しい医学教育評価機構であります。本機構は、ECFMGをはじめとする国際的医学教育に我が国として積極的に参加していく上で必要不可欠な組織であります。やや出遅れたとはいえ、この数年間で髙久前理事長のご指導により国際的に高く評価される組織に至っております。この短期間でのJACMEの活躍は、関係各位の骨身を惜しまぬ献身的貢献によって成就されてきたものであり、今後もさらなるご尽力をお願いするものであります。本機構の設立にあたっては、全国医学部長病院長会議における検討、調整がなされ、国公私立医学部・医科大学すべての医学教育機関を包含した我が国の医学教育にとって極めて重要な組織として位置づけられました。本機構の役割の重要性を痛感しているところであります。


医学教育における国際的組織としては、世界医学教育連盟(WFME)があり、本機構は我が国の医学教育の国際的質を担保するものとして、既に参加を認められているWFMEの公式な認証評価を受けることを目的としています。この我が国医学教育の国際的質保証によって、医師、医学生が国際的活躍をする場が公式に与えられ、さらに我が国が国際的医学教育を受け入れる基盤が整うことになるわけであります。


明治以来、我が国の医学は北里柴三郎を始めとして多くの優れた医学者を世界に送り出してきましたが、医学一般は国際的とは必ずしも言えませんでした。更に第二次世界大戦後、医学も米英を中心とする西洋医学に大きく変化し、一定の医学レベルには進化し、いくつかのノーベル医学賞も獲得するに至りました。多くの若手医学者も国際的に活躍しておりますが、現在のコロナ時代は例外としても、近年この国際化ということがややなおざりに付されているように思えます。Internetによって国際的医学知識習得が容易になったこと、日常の病歴などもInternet化していることは、大きな進歩であります。しかしながら、医学教育的に俯瞰すれば、例えば関係省庁の指導もあり国際的言語である英語が軽視されて来ているのも事実のようであります。すなわち我が国の医学が、国際化という観点から後退してきているのではないかと危惧されるところであります。医学の国民一般化と医学の国際化との矛盾をどのように解決していくべきかを、医学界と関係省庁との真剣な議論の下、早急に解決する必要があると思うのは小生ばかりではないと思います。10数年前、私が大学病院長を務めていた際に、関係省庁による査察があり、病歴を全て日本語で書くように指導された際の大きな矛盾感が未だに脳裏に残っており、このような文章となりました。確かに診療録の内容がすべての医療者さらには患者サイドでも理解できることは重要ではありますが、他方医学医療の国際化の点から見ると世界でほぼ我が国のみがこのような診療録となっていることは否定できないのです。現状では、和英混淆の診療録となっているようですが、その将来像について真剣に考えるべき時ではないかと愚考いたします。かくの如き場面においても、更には我が国の医学の国際化にとっても本機構組織は重要な役割を有していると感じながら、本職をお引き受けした次第であります。


いうまでもなく、現在の我が国の医学教育は幾多の重要な課題を抱えております。髙久前理事長がすでに指摘されているように、医療安全、終末期医療はもちろんのこと、少子化時代の到来、コロナに代表される国際的医学医療の習得、医師不足に陥っている地域医療など本機構に期待される多くの課題が待ち受けています。もちろんこれら膨大な問題点すべてを本機構の対象にはできないのですが、これらの課題を踏まえた医学教育を目指すべきだとは申せましょう。


医学教育に燃えている優秀なスタッフに囲まれ、髙久前理事長の崇高な理念を受け継いで、その責任の重大さを感じながら、抽象的ではありますが、理事長就任挨拶とさせていただきます。

令和3年6月30日

一般社団法人 日本医学教育評価機構

理事長 寺野 彰


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